特殊な地域 ニューイングランド

アメリカの北東部、アメリカで最も古い歴史と伝統を持つ
ニューイングランド。 特殊な地域と書き出したが、アメリ
カは地域によって様々な文化の色彩を身につけている事
に気が付いた。残念ながらアメリカの全ての地域を訪れ
てはいないので、偉そうな事は言えないが、気候や構成
する人種、主な産業等が時間の変化で異なる国とも言え
る、様々な特質を発展させてきたようだ。

セーリングやヨッティングに付いてこの地域の特質を考え
て見たい。ニューイングランドには、ニューイングランド
や少なくとも東海岸で建造されたヨットやボートの比率が
非常に高い。他の地域や国で造られた艇も勿論あるが、この地域の景色に似合わない艇は受け入れ
られていない事に気が付く。一言で言えば、一目でFRP製だと分かるような艇が少ない。

グランドバンクスというシンガポールで作られる有名なトローラーがあるが、その新しいイースト
ベイというシリーズは東海岸が誇るレイモンドハント設計事務所のデザインであり、この地域のロ
ブスターボートをベースにしたドーンイーストタイプの高速パワーボートだ。また、グランドバン
クス自体が、ニューファウンドランド沖に広がる広大なタラ漁場の名前だ。

ニューヨークヨットクラブがあるニューポートには最新のレーシングヨットやJボートのシリーズ等
も多く走っているが、ガフリグの木造艇も普通に走っている。ハラショフの代表作の一つで20世紀始
めにニューヨークヨットクラブのワンデザインクラスとされたニューヨーク30クラスをレストアし
て、レースに出る事が流行している。そして、現存する多くの艇がレストア予定とされ、レストアさ
れた艇は50万ドルの価格が付いている。このクラス協会は昨年100周年の記念イベントを開催した。               

          ニューヨーク30クラス協会 http://www.ny30.org/

ナサニエルハラショフはアメリカズカップのJクラスボートを3隻も設計した設計家で、今でもこの
地区のヨッティングを語る上で避けて通れない人だ。現在でも彼の設計艇は建造されているし、彼の
設計艇のインタープリテーションとして、最新の設計理論でモディファイされた設計も多くなされて
いる。ハラショフの伝統を大切にしている設計者やビルダーは今でも多く、キャビンのインテリアも
ハラショフスタイルというものがある。 ジョエルホワイトやチャックペイン等の設計家はハラショ
フデザインを上手く受け継いでいる人たちで、私も大好きな艇を描いている。

          チャックペイン設計事務所   http://www.chuckpaine.com/
          ジョエルホワイトに関して   http://www.brooklinboatyard.com/index.html
          W クラスヨット
(J. ホワイト設計) http://www.w-class.com/

    *このニューイングランドに関する文章の目次ページのバックの写真は、ニューポート港内を走る、
      J. ホワイトのW-48クラスという木造艇で、J. ホワイトは上記ブルックリンボートヤードの設計士。
      彼は残念ながら21世紀になる前に亡くなった。

チャックペインは、メイン州のキャムデンに居を構えるアメリカを代表するクルージングヨット設計
者で、多くの設計をモリスヨットに提供している。彼はハラショフ設計の12 1/2(ツウェルブハーフ)
という、水線長12.5フィートのロングキールでトランサムラダーを持つガフリグ艇を所有しセーリ
ングを楽しむ事は有名で、画家としても著名だ。私は彼のウオーターフロントにある事務所に行ったが
生憎の不在で、事務所の壁に多くの油絵が飾ってあるのが印象的であった。キャムデンはアルティザン
の町として有名で、画家や彫刻家などが多く住みギャラリー等も多い美しい町であった.。
J ホワイトはディープキール艇である12 1/2をセミセンターボーダーとして設計し<フラットフィッ
シュ>と名付けているし、チャックペインは<フィッシュ>を設計改変して<パイシーズ21>として
いる。ハラショフの場合、艇に付けられている数字は水線長である。

マサチューセッツからメイン州の海岸はフィヨルドのように入り組んだ複雑な入り江や湾が続き、多く
の島が点在し、浅瀬や暗岩も多い。アメリカの大型ヨットにキールセンターボーダーが多い事を不思
議に思っていたが、このような条件を知ると理解できる。

自然と伝統的なライフスタイルやそれらを包括した文化全体が、古い物(建物や景観、そしてヨット等)
と技術を大切に守り、生活の中で楽しむ風土は排他的とも感じられるが、便利・効率的・安価・手間要
らず等の言葉に、大切なものを切り捨てていく現代社会にあって、頑固とも言えるスタイルは貴重なも
のであろう。

とわいえ、セーリングヨットからパワーボートに乗り換える動きも顕著なようで、時間に追われるオーナ
ーとその家族が、限られた時間を海で集うには、セールよりパワーという事なのかもしれない。
但し、その場合でもドーンイーストスタイルの高品質なボートが好まれる。


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ニューヨーク30クラス